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2025.07.02

快進撃を続ける良品計画。「経営戦略の大転換」を支えるエグゼクティブ人材採用の極意とは

宝地戸 健太 様

事業を取り巻く環境変化が激しさを増す中で、経営戦略と連動し、変革を起こせるエグゼクティブ人材を求める企業が増加しています。

「無印良品」ブランドを軸にグローバルで事業を展開し、近年の快進撃によって注目を集める株式会社良品計画もそうした1社。パーソルキャリア エグゼクティブエージェントを通じて続々と役員クラスの人材を招へいしています。その背景には、経営戦略の大転換によって進むかつてない規模の店舗展開と、商品戦略の進化がありました。

同社はどのようにしてエグゼクティブ人材を迎え入れているのでしょうか。人事部門トップを経て同社の経営企画部を管掌する宝地戸健太氏に、エグゼクティブ人材採用の実践知をうかがいました。

宝地戸 健太 様

宝地戸 健太 様 HOUCHIDO KENTA

株式会社良品計画
執行役員 経営企画部管掌

株式会社良品計画のロゴ

株式会社良品計画

企業HP:https://www.ryohin-keikaku.jp/

目次

1.自社の強みと向き合った新成長戦略で、かつてない規模の業績拡大を実現

良品計画は2024年8月期決算で売上・利益ともに過去最高となり、2025年8月期の業績予想も上方修正されました。この快進撃の背景には何があるのでしょうか。

2021年7月に経営体制を刷新し、現取締役会長の堂前宣夫が社長に就任したタイミングで、経営戦略を大きく転換しました。

2021年当時の売上高は約4000億円。営業利益率は高かったものの、規模感としては国内小売業の中でも30位程度でした。ただ、私たちは「無印良品」という非常に強いブランドを持っており、衣食住すべての領域にまたがる商品を取り扱っています。こうした会社は国内では他に例がなく、当社にはまだまだ成長の可能性があると考えたのです。

また、創業当時から大切にしてきた「地球環境や自然に配慮する」という企業姿勢も時代の価値観と重なってきています。こうした強みを十分に生かしきれていないのではないかという経営陣の問題意識が転換の出発点でした。議論の末、私たちは既存の延長線上にはない、新たな成長戦略を模索することに決めました。

宝地戸 健太 様

新たな成長戦略とは。

方向性は大きく分けて3つあります。

1つ目はリアル店舗の数を圧倒的に拡大すること。2つ目は店舗の大型化で、従来の250坪平均から500坪へと新規出店時の基準を見直しました。3つ目はスキンケア商品など、お客さまにくり返し購入していただける商品の拡充です。これらを柱として顧客接点を広げていきました。

当然ながら、急激な転換には負荷も伴います。たとえば商品開発のスピードが店舗展開に追いつかず、一時期は売上計画や発注数の予測も困難になりました。2023年後半からは人材・組織の体制がようやく整い、成果が見えるようになってきました。直近では既存店売上が前年比105%を記録しており、店舗数と規模の拡大によって、当社にかつてないインパクトをもたらしています。

こうして確立した国内での勝ちパターンをもとに、現在は海外展開もさらに加速させているところです。

2.店舗開発やIT、物流など、さまざまな領域でエグゼクティブ人材採用を実施

新たな成長戦略を実行に移す中で、エグゼクティブ人材採用にも注力していますね。

これまでにない規模の成長戦略を形にしていく上では、既存の体制だけでは対応しきれない局面にもぶつかりました。

たとえば店舗出店一つとっても、従来のペースは国内で年間20店舗ほど。この規模であれば大型商業施設の新規出店などに伴って自然に声がかかるため、当社からプッシュする必要はありませんでした。しかし直近の3年間では約200店舗と、出店ペースが大幅に拡大しています。商業施設からの声がけを待つだけでは当然追いつかず、独自にロードサイド型店舗を出店するなどの新たなアプローチが必要でした。

これに伴って店舗開発のプロフェッショナルが必要となり、設計や什器などについても、戦略的に全体の絵を描ける人が欠かせません。

宝地戸 健太 様 width=

加えて、当社独自のECサイト「MUJIパスポート」の開発を担うIT領域や、ECと連動する物流、食品の拡販戦略など、さまざまな部門で高い専門性を持つ人材を必要としていたのです。

結果的にここ3〜4年で、執行役員クラスの顔ぶれは大きく入れ替わりましたね。

エグゼクティブ人材採用における人材要件をお聞かせください。

一貫して求めているのは、当社の事業そのものに強く関心を持ち、共感していただけることです。

言葉にすると当然のように感じるかもしれませんが、業務内容やポジションに興味はあっても、良品計画の理念や戦略には関心がない、という人と出会うことも少なくないのです。当社のエグゼクティブ人材採用では、ここがマッチングの肝だと考えています。

部門トップの人材を外部から招へいすることで、組織内にハレーションが起きることもあるのではないでしょうか。既存人材との融合を図る上でどのような工夫をしましたか。

正直に申し上げて、外部からエグゼクティブ人材を迎え入れたことによって、社内で反発が生じたこともあります。

2022年に行ったエンゲージメントサーベイでは過去最悪の結果が出ました。戦略転換による一時的な業績低迷の影響に加え、外部から人材が入ることで「自分のポジションが脅かされるのではないか」と不安を抱えていた人もいたのではないかと思います。

そこで、社員の内発的な動機付けを促進するため、人材開発に関する制度を抜本的に見直しました。具体的には「挑戦期待ポイント」という仕組みを導入し、社員が半年単位で挑戦する目標を掲げ、達成すれば株式ポイントとして還元される制度を整えたのです。

当時の私は人材開発部長を務めており、外部のエグゼクティブ人材を登用する一方で、既存組織のケアにも力を注いでいました。痛みを伴う変革だったとは思いますが、今では融合が徐々に進みつつあると感じています。

宝地戸 健太 様

3.社長はじめ経営陣も選考プロセスに関わり、「深い議論」が生まれることも

エグゼクティブ人材の選考プロセスは、メンバー・管理職層の採用とは異なる部分もあるのでしょうか。

はい。エグゼクティブ人材については通常のエントリールートではなく、パーソルキャリア エグゼクティブエージェントなど、お世話になっている人材紹介サービス担当者の推薦と私の「お墨付き」を添えて採用部門に紹介しています。

このようなクローズドの手法は、エグゼクティブ人材採用ではむしろ基本となっていますね。ポジションによっては、一般公募では伝えることのできない情報やニュアンスもありますから。これは信頼できる人材紹介サービスとのパートナーシップがあってこそ実現できる方法です。

人材紹介サービスの中には、マッチング度合いにかかわらず、とにかく多くの候補者を紹介してくれようとするケースもあります。しかしエグゼクティブ層になると、同じようなやり方ではうまくいきません。人材紹介サービス側でも当社の事業課題を深く理解した上で、「これは」と思う候補者を紹介していただきたいと思っています。

宝地戸さんは経営企画を管掌する役員として、どのように選考プロセスに関わっているのですか。

経営企画の立場から伝えるべきことがあれば、候補者との面談にも直接関わっています。ときには株主総会での受け答えのように、俯瞰的に当社の現状を説明することもあります。

これは私の体感値ですが、豊富な経験や深い知見をお持ちの方ほど、面談後にさらに情報を求めて「再面談」を希望されるケースが多いんですよ。中には面談で非常に鋭い質問を頂戴し、社内でも気付かなかった論点に触れられたこともあります。こうしたプロセスも、候補者との相互理解を深める上で大切にしています。

私だけでなく、社長をはじめとした経営陣も積極的に選考プロセスに関わっていますね。1人の候補者に社長が複数回会うことも珍しくありません。エグゼクティブ層の候補者は引く手あまたで、他社からも多くの声がかかっているはず。「口説き」を強化する意味でも、経営陣がコミットしなければならないと考えています。

4.「良い質問」を投げかけてくれる人材紹介サービス担当者は、採用を超えた経営パートナー

人の介在がより一層重要となるエグゼクティブ人材採用では、人材紹介サービス担当者との信頼関係構築も大切なテーマだと思います。宝地戸さんは「信頼できる人材紹介サービス担当者」をどのように見極めていますか。

深い信頼関係に基づくパートナーシップを構築するためには、まず私たちから当社の経営課題や事業課題を率直にお伝えして、人材紹介サービス側ではそれを的確に解釈していただくことが重要だと考えています。

その点において、パーソルキャリア エグゼクティブエージェントの皆さんにはとても感謝しているんですよ。特に感心させられるのは、私たちに投げかける「質問の“質の高さ”」です。

宝地戸 健太 様

人に関心を持ち、よく調べ、深い質問を投げかけるというのは、簡単なことではありません。エグゼクティブ層を専門とする人材紹介サービスはたくさんありますが、これができる人は案外少ないのではないでしょうか。

良い質問をたくさん浴びせていただくからこそ、私たちは経営や事業の展望を深く語ることができ、結果的に候補者にも伝わります。

また、私たちにとっては貴重な内省の機会でもあります。質問されることによって、自分の中で「相手が何を知りたいのか」「どんな答えが必要なのか」を考え、思考を整理して回答する。こうして自らの内省を深められるプロセスを尊く感じているんです。

私だけではありません。社長も、パーソルキャリアの皆さんとの面談をいつも楽しみにしていますよ。経営層は普段は質問される側ではなく、発信する側に徹することが多い。だからこそ良い質問を投げかけてくれる人材紹介サービス担当者との対話は、採用パートナーとしての関わりを超えた、経営パートナーとしての価値を持っているのでしょう。

今後も当社は非連続の成長を続けていきたいと考えています。経営戦略を支えてくれるパートナーとして、引き続きパーソルキャリアの皆さんに期待しています。

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